起き上がりの介助
【Q】
ベッドから起き上がることができない利用者がいます。起き上がりの介助をしたいのですが、観察のポイントと介助の際の留意点を教えてください。
【A】
姿勢と環境のチェック
まずは、利用者が起き上がりやすい状態にあるかどうかを確認します。具体的には、利用者の首や手、肘、膝がまっすぐになっているか、身体が左右対称になっているか、身体全体がリラックスしているかを確認します。また、ベッド上に十分なスペースがあるか、ベッドの機能はどうか、手すりはつかみやすい位置にあるか、太さや素材はどうかなど、環境面の確認も必要です。
動作を分解してみる
次に、起き上がりの動作を分解してみます。起き上がりの動作は、(1)起き上がる方向に寝返りを打つ、(2)両手をついて上半身を起こしながら両足をベッドから下ろす、(3)端座位になる、という3つの動作に分けることができます。自分で起き上がることができない利用者については、(1)~(3)のどの動作ができないのかを見分けることが大切です。
できない原因を考え、必要な介助を行う
どの動作ができないのかが明らかになったら、「なぜできないのか」を考えて介助の方法を決定します。例えば、「両手をついて上半身を起こしながら両足をベッドから下ろす」という動作ができない場合は、原因として、両手をつくスペースがない、手、肘、肩の筋力が低下していて支えられない、手、肘、肩、腰などに痛みがある等々の理由が考えられます。原因が明らかになれば、起き上がる前に十分なスペースを確保したり、上半身を支えたり、ベッドの背上げ機能を活用したりすることで、自分で上半身を起こすことができるかもしれません。
このように一つひとつの動作について、できない原因を考え、それを解決するような介助を行うことで、全介助を行うのではなく、利用者のもっている力を活かしながら必要な支援を提供することができるようになります。
出典:石山満夫=編著、『観察力と考察力をみがく“ひょっと視点”で広がる介護技術』、中央法規、2011年