相互作用に注意が必要な薬
2012年06月28日 09:10
【Q】
併用して服薬すると、副作用などで危険な薬はあるのでしょうか。
【A】
薬物の代謝が、肝臓の特定の薬物代謝酵素に依存しているものがあることが、相互作用に関連します。例えば、服薬している数種類の薬が、同じ薬物代謝酵素に依存している場合、薬物の代謝に時間がかかり、血中濃度に影響することになります。つまり、同じ薬物代謝酵素に依存する代謝されやすい薬と代謝されにくい薬の二種類を服用している場合では、代謝されにくい薬の半減期が長くなることになります(阻害)。その結果として、代謝されにくい薬剤の血中濃度が高くなることになります。逆に、ある薬によって薬物代謝酵素が活性化される場合、その薬物代謝酵素が分解する薬は早く代謝されます(誘導)。結果として、血中濃度が低くなることにあります。
相互作用を受ける薬剤の阻害や誘導の強さが、効果の大きさに影響します。同様に三環系抗うつ薬(TCA)の代謝のように、多くの代謝経路が存在する場合には、誘導薬や阻害薬が重大な効果をもたらす可能性は小さくなります。ただし、ニコチンによる肝臓の酵素誘導により喫煙者では非喫煙者に比べTCAの代謝が速く、タバコを急にやめるとTCAの血中濃度が上昇するなどが見られるので、喫煙者には注意が必要です。
酵素誘導によって引き起こされる相互作用が完全に発現するまで、数日、時には数週間を要し、誘導薬を中止しても、それと同程度の期間、相互作用が持続することがあります。酵素阻害による相互作用は、2~3日以内に起こり、急速に毒性を発現させます。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011。