スタッフの言うことが聞けていますか?
【Q】
スタッフはみな出払っていて、ステーションには介護リーダーA一人。介護リーダーAは、明日までに仕上げなければならない勤務表作りで忙しい。そこへスタッフBがやってきて、「リーダー、話があります」と話しかける。「今、手が離せないんだけど…」と返すと、「では、これを受け取ってください」と、スタッフBは“退職願”を机にそっと置き、ステーションを出て行く。退職願を見た介護リーダーAは、慌てて後を追いかけ、スタッフBを呼び止め、「退職するのに、こういうやり方はないんじゃない?」と話しかけると、堰を切ったようにスタッフBが話し出す。「こういうやり方はない? 私は“リーダー、話があります”と言ったのに、“今、手が離せない”とおっしゃったのはリーダーのほうですよ。それに、今までも何度も話をしに行ったのに、いつも“やれレセプトだ、やれ請求書作りだ、やれ勤務表作りだ”と断り続けられたのは私のほうです。もう話はありません、退職します!」
【A】
介護リーダーは、話を聞くことが仕事である。その中でも (1)話をきちんと聴くこと、(2)3つの“きく”を実践すること、の2点が重要である。
“話をきちんと聴く”とは、“タイムリーに、タイミングよく、タイト(親密)”に聴くことであり、“話の腰を折らず、話を最後まで聞く”ということであり、“雰囲気を作る、状況に合わせて聴く”ということである。特に、タイト(親密)に聴くことが重要で、これができる人に共通に見られる言動が“相槌”“うなづき”“感嘆詞”である。
次に“3つの<きく>を実践する”とは、“聞く”ことと“聴く”ことと“訊く”ことである。“聞く”とは、世間話や愚痴、家庭の話題などをきく場合の聞き方で、可もなく、不可もなく、明るく聞くことである。しかし、愚痴はなるべく門構えの上(「聞く」)、耳を傾けて戴きたい。
“聴く”とは親身になって聴くことで、業務上のことや、相談などをきく場合の聴き方で、「傾聴」ともいう。傾聴とは「十四の心をもって耳を傾ける」と書き、十四の心とは、[忠(真心をつくし)・忍(しのび)・思(おもい)・念(いつも思い)・恩(情けをかけ)・恵(めぐみ)・患(気にかけ)悠・(ゆったりと)・感(感じいり)・愁(心配して)・憩(いこい)・想(思いはかり)・慰(なぐさめ)・懇(ていねいに)]のことである。しっかりと聴いていただきたい。
“訊く”とは、何かを尋ねる時に用いる訊き方である。お客様に関する情報や、職員個人に関する情報、教育に関する情報などさまざまである。5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、どのように、どうした)を用いてしっかり訊くことが重要である。
話を“きく”ことができれば、事例のような退職希望は避けられるに違いない。
出典:石郡英一著『介護リーダー役割発揮のための基礎50』中央法規出版、2007年