介護の本質を理解していないスタッフへの対応法は?
【Q】
入浴介助をしている介護リーダーAとスタッフB。ここでは、入浴介助は機能別で、Aは直接介助、Bは更衣介助を担当していた。認知症のCさんの入浴介助となり、Bが更衣介助をしていたら、ズボンを脱がしたところでCさんが排便。その直後、Cさんはその便を踏みつけ、お尻から転倒。痛がるので、至急、脱衣室に設置してあるナースコールを押し、ナースに連絡。ナースの判断でその後入浴は中止し、排便後のCさんの清拭をすませると、大事をとって病院へ受診。幸いにも外傷、骨折などはみられず。骨折がなかったと知らされると、スタッフBはリーダーAに向かって「もうCさん、嫌になっちゃう!! 入浴前にトイレに誘って、便器に座ってもらった時は、5分経っても便が出なかったのに…。なのに、ズボンを下ろした途端に排便って…。認知症とはいえ本当に嫌になっちゃう!!」
リーダーA「嫌になるという前に、その便を踏んでCさんは転倒して、危なかったのよ…」
スタッフB「不可抗力でしょ! Aさんは私のことは全然理解してくれないんですね!」
【A】
スタッフはリーダーの映し鏡である。愛情が欠けているリーダーの下では、愛情の欠けたスタッフが育つ。尊敬の欠けているリーダーの下では、尊敬の欠けたスタッフが育つ。美徳を持たないリーダーの下では、美徳を持たないスタッフが育つ。そこで、リーダーの役割として、あそび心を身に付けなければならない。
あそび心を身に付ける一番手っ取り早い方法は、“感じ、感謝し、感動する”ことである。
“感じる”とは、物事を深く捉える癖をつけることであり、自分の心の動きを知り、相手の心の動きを察することである。いつもスタッフ一人ひとりを気にかけ、接することが大切である。“気づき”という、心を察する技術も、この感じるところから始まるのである。
“感謝する”とは、いつも「ありがとうございます」という謙虚な気持ちを持つことである。“実るほど頭を垂れる稲穂かな”(偉くなるほど、謙虚になる)のことわざ通り、お客様一人ひとりに、スタッフ一人ひとりに、いつも謙虚さを失わないことが大切である。
“感動する”とは、心を磨く技である。感動すると、人の顔は内面から美しくなる。内面の美しさは、化粧で作られた美しさ以上に真実がある。まさに“感動は心の化粧”である。
これらを毎日実践する中で、あそび心が身についてくるのである。その姿勢が実は、スタッフへの何よりの教育なのである。
出典:石郡英一著『介護リーダー役割発揮のための基礎50』中央法規出版、2007年