他科の医師
2012年05月25日 09:10
【Q】
予後不良な疾患の告知後や、障害受容に伴ううつ状態や不安状態に対して、他科の医師は精神科薬を使いたがらないことが多いように思いますが、使わないほうがよいのでしょうか?
【A】
予後不良の疾患や障害に対する受容は、個人差に加えその重症度によっても異なりますが、多くの場合長い時間を要するものです。患者さんはそれまでと生活環境が変わったうえに、疾患ないし障害が家族関係に影響を及ぼすことや、症状が悪化することなどを気に病み、常に不安をもち続けるかもしれません。不安や恐怖が先立って疾患や障害の程度を誤解したり、「治らない」という思い込みから「自分はだめだ」「家族に迷惑をかけるだけだ」などと自責感を募らせたりすることもあるでしょう。こうした悪循環ともいえる思考サイクルに陥ると、疾患、障害を正しく理解できないばかりか、受容のプロセスにも弊害を生じます。不安から不眠、食欲不振などの身体症状、抑うつ気分に進展する可能性も考えられます。ですから看護者は、不安や自責感、抑うつ感を抱えて苦しみに耐える患者さんに対して、その症状軽減を図るためにもじっくりと患者さんの気持ちを傾聴していく姿勢と、患者さん自身も自らできる具体的な対症療法的なケアが求められます。場合によっては、患者さんがつらい気持ちを解消できずにいることを医師に相談し、薬物投与を検討してもらうなどの取り計らいが必要でしょう。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011年