非定型抗精神病薬の効果
【Q】
いろいろと、非定型抗精神病薬を含め使ってみました。しかし、薬物療法でまったく患者さんの症状の改善がみられない時には、どうしたらよいのでしょうか?
【A】
患者さんの「状態」に応じた投与方法としては一般に、不安緊張状態にはノルエピネフリン受容体拮抗作用を有する抗精神病薬が、幻覚や妄想状態にはドパミン受容体拮抗作用のある抗精神病薬が使用されます。また、著しい情動障害にはセロトニン受容体拮抗作用のあるが投与されます。患者さんの精神症状や不安定さがなかなか改善しない場合は、それぞの症状に応じた拮抗作用のある薬物を選択し、そのうえで薬剤の併用を開始する必要があります。
重症例において改善しづらい症状の軽減を図るために、抗精神病薬の併用療法を行うことがあります。しかし、それを行う場合、総力価の上昇に伴う重篤な副作用に対する管理、また、投与した後の効果判定が不可欠です。さらに、標的症状の軽減に努めるあまり多剤併用に偏る傾向がありますので、精神療法や認知療法、行動療法、心理教育などを一緒に組むなど、治療の幅を広げて工夫する必要があります。当然のことながら、患者さんの変化に即応した看護者のかかわりも重要です。多剤併用ではありませんが薬物療法中の患者さんで、身体合併症により抗精神病薬を使用できなくなったケースでは、看護者がその患者さんを頻回に訪室し、状態を観察して対応した結果、内服できなくなったにもかかわらず精神症状の増悪を防ぎ、かつ合併症回復後は単剤投与の再開で精神症状を安定させることができました。希少なケースですが、患者さんの症状に応じた看護者のアプローチがいかに重要であるかがわかります。
非定型抗精神病薬だけでは対応できないケースもありますので、定型抗精神病薬に関する知識も備えておく必要があります。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011年