高齢者虐待防止法の理解(3)
2012年05月16日 09:10
【Q】
虐待対応の施行主体は?
【A】
本法律は、市町村を「施行主体」として位置づけています(第3条第1−3項)。特に虐待者(養護者)による高齢者虐待の対応に関して、都道府県の行政の役割が、「市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報の提供、その他必要な援助」及び「市町村に対し、必要な助言を行う」(第19条)ことに限定されていることに注目してください。これは、従来の国の法律の施行に際して、都道府県が市町村に対して行った「指導的」とも言える接触の方法とは異なっています。さらに、施設内虐待及び養介護事業業務の従事者による虐待の通報や届出も市町村(第21条第1−4項)と、本法律は定めています。
ところが、養介護施設等は、都道府県の行政から営業に関する許可や監督を受けていることから、市町村のみで、虐待の事実確認の立ち入り調査等を行うことの難しさが想定されていました。したがって、本法律は、施設内等の高齢者虐待の通報や届出に関する事項を市町村が虐待に関わった施設や事業所の「所在地の都道府県に報告しなければならない」(第22条)という規定を設けました。そのため、施設内等の高齢者虐待の通報や届出に関する調査は、都道府県と市町村の職員がチームで行っている地域が多いようです。
出典:社団法人日本社会福祉士会編『高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル実践ガイド』中央法規出版、2010年