高齢者虐待防止法の理解(1)
【Q】
高齢者虐待の対象とは?
【A】
本法律は、「養護者による高齢者虐待」(第2条第2項)、「養介護施設従事者による高齢者虐待(第2条第3項)及び「養介護事業業務の従事者による高齢者虐待」(第2条第5項)の3つに異なったタイプの高齢者虐待を対象にしています。
最初の「家庭内の高齢者虐待」と「施設内の高齢者虐待」の2つは、他の国の高齢者虐待防止法にもよく一緒に含まれているので珍しくありません。さらに、3番目の「養介護事業に係るサービスの提供を受ける高齢者」に対する虐待行為も、その概念は「高齢者福祉専門職による虐待」等の形で高齢者虐待防止法または成人保護サービス(APS)に反映されているかもしれません。しかし、わが国においては、このタイプの高齢者虐待は、2000年から施行されている介護保険法に関係のある養介護サービス業務の従事者によるものがほとんどです。
具体的な養介護事業に係るサービスまたは支援事業業務の名称と関連法規は、以下のとおりです。老人居宅生活支援事業(老人福祉法第5条の2第1項)、居宅サービス事業(介護保険法第8条第1項)、地域密着型サービス事業(介護保険法第8条第14項)、居宅介護支援事業(介護保険法第8条第21項)、介護予防サービス事業(介護保険法第8条の2第1項)、及び介護予防支援事業(介護保険法第8条第18項)。このように、1つを除いて、すべてが介護保険に関わるプログラムです。
世界で、公的介護保険プログラムを展開している国は、ドイツと日本、韓国のみですが、ドイツには、日本のような高齢者虐待防止法はまだ存在しません。したがって、本法律の「養介護事業業務の従事者による高齢者虐待」は、とてもユニークであるといえるのです。
出典:社団法人日本社会福祉士会編『高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル実践ガイド』中央法規出版、2010年