地域づくり
【Q】
介護事業所から地域をつくっていくために必要なことを教えてください。
【A】
地域づくりとは過程であり、目的にはなりません。地域の方と様々なネットワークを作ることを考えるのであれば、まずは誰でも気軽に行けるような居場所を作ることが先決です。前述のとおり、人は、集めることが大事ではなく、集まることが重要です。こちらが招かなくても相手から自然に来る場所こそ、地域に開かれている場所といえるでしょう。
人が集まる場所にするには、まずは仕切りを下げ、玄関から入りやすくすることです。扉を閉ざし、風通しの悪いところには人は集まってきません。入口を開けていつでも自由に出入りできるようにすることで、施設内の風通しがよくなり、地域と施設の中が同じ空気になります。玄関にかぎをかけて、中で何をしているのかわからないところに人は集まってきません。施設内でどのようなことをやっているかをいつでも見てもらえる状況にしてこそ、訪れる相手には安心感が生まれます。
また、訪れた人がゆっくりとお茶を飲める雰囲気でなくてはいけません。「どうぞ」と出されたお茶を飲めない雰囲気の場所に、人はとどまろうとはしません。自分の家にお客さんが来た時に、お茶も飲んでもらえないと気になりますよね。地域でのかかわりは家と同じです。ですから、介護職としてではなく、一人の人間としてかかわったほうが、関係は円滑に進みます。
施設内の関係性は、あいまいなほうがよいでしょう。なぜならば、明確な関係性は画一的な関係になり、つながりを発展させなくなるためです。
たとえば、「介護する側」と「介護される側」と関係性を明確にすると、一方通行な関係にしかなりません。自分と相手、両方からの働きかけがあってこそ、コミュニケーションは成り立ちます。支えるというのは、相手がされることで成り立つだけではありません。相手がすることで支えられることもあります。
出典:安西順子編『気づいていますか 認知症ケアの落とし穴』中央法規出版、2012年