非定型抗精神病薬と糖尿病
2012年04月18日 09:40
【Q】
非定型抗精神病薬について、以前に糖尿病禁忌の緊急安全性情報が流されたことがありました。糖尿病と非定型抗精神病薬との関係について教えてください。
【A】
オランザピンの緊急安全情報が2002年4月に、クエチアピンフマル酸塩(セロクエル)の緊急安全性情報が2002年11月に出されました。いずれも、本剤との関連が否定できない高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡の重篤な症例が報告され、この通知に至りました。高血糖については、それ以前にすでに「使用上の注意」の欄に記載され注意が喚起されていました。しかし、これら報告された重篤例の検討の結果、「使用上の注意」を改訂するとともに「警告」「禁忌」を追加するに至りました。「警告」「禁忌」「重要な基本的注意」は添付文書等で確認してください。
クロザピンやオランザピンなどの一部の非定型抗精神病薬が、耐糖能異常や脂質代謝異常を誘発しやすいことが明らかとなっています。その使用にあたっては、肥満や糖尿病の悪化に十分に注意するように求められました。しかし、必ずしも肥満を伴うとは限りません。耐糖能や脂質代謝の異常は体重増加に伴う二次的なものではなく、薬物の直接の作用である可能性が示唆されています。
耐糖能異常、特に高血糖をきたす薬剤は臨床上多く用いられており、糖尿病発症には十分な注意が必要です。しかし、これらの薬剤を投与された患者さんすべてが高血糖をきたすわけではなく、患者さんのもつリスクファクターを念頭に置いて、糖尿病発症の有無を定期的にモニタリングしていく必要があります。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011年