非定型抗精神病薬と肥満
【Q】
非定型抗精神病薬の服用により、太る人が増えたように思います。非定型抗精神病薬と旧薬の肥満との関係を教えてください。
【A】
精神障害と肥満の関係は古く、1920年代にクレッチマーが双極性障害と肥満型との親和性を指摘しています。そして、1950年代に薬物療法が導入された頃より、すでに肥満に関する報告が多くされています。また、体重増加は症例によりその増加の割合がさまざまですが、定型抗精神病薬の副作用としてよく見られるものです。海外における研究によれば、肥満は25~50%の抗精神病薬服薬患者に認められ、女性に多いと報告されています。
肥満の原因としては、次の4点が考えられます。(1)抗精神病薬による鎮静からの活動性の低下と消費カロリーの減少、(2)抗コリン作用による口渇、(3)症状改善による食欲の亢進、(4)抗精神病薬の摂食中枢と満腹中枢に対する直接的な作用。
このように、抗精神病薬と肥満の関係は古くからあり、研究もされていました。しかし、今まであまり注目されなかったのは、重篤な副作用と比較すると緊急性を低くみられていたことや、体重増加は精神症状の改善と相関があることが指摘され、そもそも副作用なのかといった考えもあったためと考えられます。
近年、指摘のように肥満があらためて注目されるようになったのは、統合失調症の薬物療法の主流となりつつある非定型抗精神病薬が、いずれも従来の定型抗精神病薬と比較して、耐糖能異常や脂質異常症を怠起しやすいこと、そして体重増加や肥満を誘発しやすいことが報告されたことによるものです。
肥満は薬剤投与開始後約6か月以内に始まり、多くは一過性でおよそ1年後には停滞に達すると報告されています。なかには減少する人もいるようです。そして問題となるのは、精神障害者のなかには生活習慣の乱れとあいまって、著しい肥満に発展することがあることです。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011年