非定型抗精神病薬の効果
【Q】
非定型抗精神病薬は従来の薬より効くといいますが、どうも効いていない感じもします。どうなっているのでしょうか?
【A】
非定型抗精神病薬は、陽性症状に対しては定型抗精神病薬と同等かそれ以上の効果を発揮し、陰性症状、認知機能障害に対しては定型抗精神病薬では効果がなかったのに対して、非定型抗精神病薬では効果があるとされています。また、定型抗精神病薬よりも副作用が出にくいこともあり、現在の精神科医療の第一選択薬となっています。ではなぜ非定型抗精神病薬は効きが悪いと思われてしまうのでしょうか。それには、抗精神病薬が何に対して効くのかを考える必要があります。一つ目は、医療従事者が患者さんを観察する時の視点。二つ目は非定型抗精神病薬そのものの効果を薬理学的に考えていくこと。この二つのポイントから考えます。
まず一つ目のポイントである医療従事者が患者さんを観察する時の視点です。以前の精神科医療は、長期入院治療を前提として考えられ、人員配置基準も少ない人員で大勢の患者さんを診るようにされていました。そのため、患者さんには過鎮静気味に鎮静をかけ、少ない医療スタッフでも対応できるようにしていたともいわれます。いわば、薬による化学的拘束をかけていたと考えられます。この長期入院治療の時代が長く続いたため、患者さんを観察する際の視点が、鎮静のかかった状態がよくなっている状態ととらえがちになっていると考えられます。観察する時には、患者さん自身に鎮静がかかっている状態を「軽快している」と考えるのではなく、精神症状の静穏を「軽快」ととらえる必要があります。その鎮静がかかりにくいというのが、非定型抗精神病薬の特徴であるといえます。鎮静している状態を「軽快」ととらえると、非定型抗精神病薬はあまり効かない薬となってしまいます。
次に二つ目のポイントの、非定型抗精神病薬そのものの効果についてです。抗精神病薬は鎮静としての即効性を求めるものではなく、ドパミンD2伝達の調整を目指すものであり、効果を考える時には2~4週間、安定的な効果を考えると、4~6週間の期間を要するといわれています。効果が発現するまで「待つ」という姿勢が重要になります。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011年