聴覚障害者(児)の支援について~1.聴覚の障害とはどのようなもの?(1)
身体障害など目にもそれと分かる障害に比して、聴覚障害は傍目にはそれと分かりにくく、理解されにくい障害です。コミュニケーションが図りにくいことから、情報が伝わらない、的確な判断に支障が生じやすいなどで、周囲から孤立していくといったことが起こります。高齢者の場合には、自分の要望等を正確に伝達できずに、次第に精神的な活動を衰えさせてしまうなど、様々に課題がある障害です。
今週は、聴覚障害について、基本的な認識と主だった施策等を紹介します。
1.聴覚の障害とはどのようなもの?(1)
2.聴覚の障害とはどのようなもの?(2)
3.補聴器などの障害補償機器にはどのようなものが
あるか?
4.聴覚障害に関わる支援施策にはどのようなものが
あるか?(1)
5.聴覚障害に関わる支援施策にはどのようなものが
あるか?(2)
1.聴覚の障害とはどのようなもの?(1)
聴覚を司る器官のいずれに障害があるかで、障害の程度も様々です。たとえば中耳や鼓膜、鼓室といった伝音器の部位に異常がある(伝音難聴)なら、音量を上げれば聞き取れることが多いので、補聴器の利用でかなりの改善がみられます。また、障害のある部位の治療や手術で治癒することもあり、聞こえないと言って諦めることはありません。
しかし、音を伝達する内耳の有毛細胞や蝸牛神経、その後の大脳側頭葉に達する神経系といった神経経路に何らかの異常がある場合(感音難聴)は、声は聞こえても音声を明確に聞き分けることができずに、結果として何を言っているのか分からない、といったことに陥りやすく、補聴器での音量補正では限界があることもあります。感音難聴は、今日の医学では治療・手術といった手段で解決することはできません。
伝音難聴を引き起こす疾患としては、慢性中耳炎、耳硬化症、外耳道狭窄などがあります。感音難聴を引き起こす疾患としては、内耳性のものに先天性の内耳障害・奇形、遺伝子異常、メニエール病、突発性難聴や老化などがあります。また神経系のものには、聴神経腫瘍や脳梗塞、脳出血、脳腫瘍の後遺症などがあります。
【参考図書】
奥野英子編著『聴覚障害児・者支援の基本と実践』(中央法規出版)平成20年3月刊、定価2800円(税別)