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認知症の人の終末期

【Q】
 認知症の人の終末期について教えてください。

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【A】
 認知症のなかには、特発性正常圧水頭症やビタミン欠乏症など、約5%の頻度で治療できる認知症があるといわますが、その他のほとんどの疾患は基本的に進行性であり、死に至る病です。
 アルツハイマー型認知症では、発症から約10年の経過で緩やかに機能が低下し、最期には飲み込みができなくなります。診断まで一定の時間がかかっていることや多くの人が合併症で亡くなっていることから、診断後平均数年で亡くなっているというデータもあります。また、血管性認知症や前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症よりも命の長さが短いという報告が多いようです。
 そのため、穏やかに苦痛なく過ごすことが、重度から末期の認知症ケアの目標となります。「末期の認知症の人は苦痛を感じない」というのは大きな誤解です。末期でも情動や快・不快を感知する古い脳(辺縁系)の機能がある程度保たれています。住み慣れた家のような「その人らしさを損なわれない環境」では、末期になっても快・不快(苦痛)や喜怒哀楽、あるいは人との絆を感じる力が保持されていることを経験します。
 アルツハイマー型認知症が重度になるとさまざまな身体合併症が現れるため、それに伴う身体的な苦痛を和らげることが大切です。重度の認知症高齢者がもつ身体的な苦痛としては、飲み込めないこと、食べられないこと、肺炎に伴う呼吸困難や喀痰、発熱、長期の臥床に伴う褥瘡や便秘、拘縮などの老年症候群が主であり、痛みが問題になることは少ないようです。ですから、認知症の緩和ケアでは、がんの緩和ケアのように特殊な緩和医療手技が必要となることは多くありません。

出典:安西順子編『基礎から学ぶ介護シリーズ 気づいていますか 認知症ケアの落とし穴』中央法規出版、2012年


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