不潔行為への対応
【Q】
不潔行為のある利用者とその家族へのアドバイスについて教えてください。
【A】
不潔行為とは、身体状況に加えて、場所の見当識障害、失行、失認など認知症の中核症状が組み合わされることで起こります。特に排泄にまつわる問題は、認知症の軽度から重度まで広くみられ、その内容もさまざまです。
排泄にまつわる問題があった時、大切なのは「不潔行為」というレッテルを貼らないことです。どの程度の認知症の人が、どういう環境のなかで、どのような行為があったかのを詳細に記載することで解決の糸口がみつかります。不潔行為と一言でいっても、その要因はさまざまで、認知機能の評価と十分な観察に基づいた対応が必要です。
例えば軽症のアルツハイマー型認知症の人が、汚れた下着をタンスにしまってしまい、家族がそれを発見して大騒ぎになることがあります。認知症の有無にかかわらず、女性が一定の年齢になれば腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁は起こりやすいものですが、汚れた衣服を羞恥心から隠そうとして、隠したことを忘れることがあります。この場合は、汚れた衣服をそっと片づけるとともに、失禁に対して薬などによる医学的アプローチを検討するほうがよいでしょう。
中度のアルツハイマー型認知症では、場所の見当識障害が現れ、昼間は大丈夫なのに、夜になるとトイレの場所に迷って途中で失禁することがあります。この場合は、トイレまで誘導するように廊下を明るくするなどの工夫が必要です。この時期は衣服の着脱ができず(着衣失行)、間に合わず失禁することもあります。着脱しやすい衣服にしたり、着脱を介助することによって失禁はなくなります。
出典:安西順子編『基礎から学ぶ介護シリーズ 気づいていますか 認知症ケアの落とし穴』中央法規出版、2012年