利用者と家族の意見が違うとき、どのように調整したらよいのでしょう。
【Q】
ある利用者は、ぜひサービスを利用したいと言うのですが、家族がそれを認めようとしません。利用者本位の支援をしてあげたいと思うのですが、家族がそれを阻んでいるような気がします。
【A】
「利用者本位の支援」といっても、利用者だけのことを考えるのではなく、家族の意見とのバランスの中で、その家庭にとっての最善の答えを見つけていくことが求められます。
経験の浅い相談援助者の陥りやすい傾向としては、利用者の立場を尊重するあまりに、家族の言い分や立場が見えにくくなることです。また、当然、逆の傾向もあります。
このような対応になるのは、自分自身の価値観や考え方がどちらかの立場に傾倒し、そのことに自分自身が気づかない場合や、最初から片方しか見ていない場合などです。それゆえ、どちらかの立場に過度に感情移入している自分に気がついたら、まず自分自身を見つめ、双方を見て、その考えを中立的に修正していくことが必要です。バイステックの7原則にある非審判的態度や統制された情緒的関与などは、どんなときにも相談援助の基本になります。
次に、家族の意見調整に入ります。その対応として、例えば以下のようなことが考えられます。まず、利用者と家族を個別に面接し、そのように考える理由と今後の見通しなどを聴きます。そのなかで事実について誤解や理解不足があれば、適宜、情報提供をしたり修正を行います。次に、両者の面接を通して、利用者と家族の相互関係を把握します。上下関係、親密さや疎遠さ、依存や対立、価値観や生活観の相違点や共通点など、最初からすべてを把握しなくてもよいのですが、仮説を立てながら少しずつ検証できればよいでしょう。そして、利用者と家族の意見と関係性の仮説をもとに、両者の意見調整を行います。そのゴールは、利用者も家族も納得できる決定ですが、どちらかが不満をもったり、専門職がよいと思う意見と家族の決定は異なる場合もあります。そのため、その決定への評価期限を決めて、うまくいかないときは別の方法をとることも決めておくとよいかもしれません。
ここに紹介した対応は一例にすぎませんが、家族を個別に捉えることと、家族を一つのシステムとして捉え、その力動関係や相互作用を踏まえて介入することは、家族支援の基本です。
出典:神山裕美・木戸宣子『対人援助・生活相談サポートブック』中央法規出版、2008年