家族はいるのに、だれも利用者を支援する意思はないようです……
【Q】
家族の手助けがあれば十分自立できる利用者ですが、家族はだれも手を出そうとしません。援助者としてどのようにかかわればよいでしょうか?
【A】
家族は利用者にとって一番近しい立場ですから、援助者としては家族の存在や家族からの支援を中心に支援計画を考えたい気持ちになります。
しかしながら、家族だけを支えとするのは難しいことがあります。家族は利用者を支えるためだけに存在するのではなく、それぞれに立場があり、家族内の関係性もあるからです。個々のメンバーは職場や学校などの家庭以外にも所属場所があり、そこでの役割も担っているのです。また、それまでの家族のありかたによっては、利用者を支えることが困難な事情があるかもしれません。
ですから、支援計画を考えていくにあたっては、利用者が家族に対して期待していることを確認し、それを家族に求めていくだけでなく、これまで家族の中ではどのような役割や関係性があったのか、またそのような家族の中で利用者自身はどのような立場にあったのかなど、家族状況を把握していくことも必要です。
家族の手を借りることが難しいのならば、むしろほかの社会資源やサポートを活用することも考える必要があります。サービスを活用する方法もあり得ますし、ボランティアや近所や友人などのインフォーマル・サポートに目を向けることも重要です。
このような周囲のサポートに目を向けながらも、家族の存在は重要です。家族が直接かかわったり、援助をすることが困難であろうとも、家族は利用者にとっても拠り所のはずですから、家族の存在、見守っていてくれるということを大事にして、利用者自身の自立を考えていく必要があるでしょう。
出典:神山裕美・木戸宣子『対人援助・生活相談サポートブック』中央法規出版、2008年