家族が利用者の症状を理解しないのです……
【Q】
家族が利用者の症状を理解しないのです……
【A】
身近な家族が障害や病気によって認知レベルや身体機能が低下した場合、それを認めたくない、受け入れたくないという気持ちは、誰もが抱くものでしょう。障害や病気の受容は、ショック、否認、悲しみと怒り、適応、再起という段階を経るといわれています。別居している家族やふだん利用者と接する時間の少ない家族の場合、障害や病気を受け入れる時間もかかり、抵抗感も大きいことが予想されます。また、家族の理解度や認知レベル、障害や病気に対する情報や知識の程度によっても、受容の度合いは異なるでしょう。
こうした家族が利用者の症状を正しく理解し、受け入れ、対応していくことができるように家族を支えることが相談援助職の役割ではないでしょうか。利用者の症状に一番とまどい、困っているのは家族なので、面接などを通じてその気持ちを吐露して整理できるように、共感し、受容して支えることを最優先にしていきましょう。
障害や病気の受容には葛藤が伴い、一度や二度面接をしたからといって家族が受容できることは稀です。家族が現実に向き合う過程において、援助者が家族から理不尽に怒られたり、愚痴をこぼされたり、無理な要求をされたりして何もできない自分が情けなくなることもあるでしょう。しかし、それも相談援助の支援過程にはありうることです。
また、家族会などの当事者グループ(セルフヘルプ・グループ)を紹介し、家族同士の相談を勧めたり、研修会などの参加を通して認知症への理解を深めてもらう方法もあるでしょう。援助者との相談ではうまくいかない家族も、当事者同士では素直に感情を吐露し、障害や病気の受容が進みやすくなることもあります。家族の障害や病気の受容を支えることは、利用者支援としても重要なことで、それが結果として利用者ケアの向上につながっていくのではないでしょうか。
出典:神山裕美・木戸宣子『対人援助・生活相談サポートブック』中央法規出版、2008年