就寝前の睡眠薬以外の使用
【Q】
就寝前に抗不安薬や抗精神病薬を使うこともありますが、睡眠薬との違いは何でしょうか?
【A】
統合失調症や気分障害などの精神疾患による重度の不眠には、睡眠薬に加え睡眠作用のある抗精神病薬や抗不安薬、抗うつ薬を併用します。ベンゾジアゼピン系、あるいは非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使わないほうがよいといわれている病態には、抗精神病薬や抗うつ薬のみが使われることもあります。
抗不安薬のほとんどはベンゾジアゼピン系の薬剤です。ベンゾジアゼピン系の薬剤の中で眠気が強いものが睡眠薬、睡眠導入薬として使われるだけです。抗不安薬として使われようと、睡眠薬として使われようと、その作用、副作用はほとんど変わりません。どちらに分類して使用されているかは、国によって違います。
現在、睡眠薬のほとんどはベンゾジアゼピン受容体に作用するベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の薬剤です。統合失調症の不眠にこれらの薬剤を処方することについて、かつては慎重さが必要ともいわれていました。しかし、抗精神病薬などとの併用が不安・焦燥感に有効で、抗精神病薬を減薬できるとの報告もあり、また陰性症状を改善するともいわれています。
就寝前薬として抗精神病薬や抗うつ薬が使われるのは、これらの薬剤に鎮静-催眠作用があるからです。本来の精神病の治療薬であるこれらの薬剤で睡眠が確保できれば、あえてベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使う必要はないともいえます。ベンゾジアゼピン系の逆説反応、前向性の健忘などの副作用は、まれともいえません。そのおそれが強い時には、抗精神病薬、抗うつ薬のみで不眠に対処することになります。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011年