睡眠薬の与薬可能時間
2012年03月15日 09:10
【Q】
睡眠薬は何時くらいまでなら与薬してよいのでしょうか?
【A】
現在、臨床で使われている睡眠薬のほとんどは、ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系、ゾルピデム酒石酸塩です。両者とも、受容体でいえばベンゾジアゼピン受容体に作用するといわれていて、ベンゾジアゼピン受容体作動睡眠薬と分類されることがあります。この二つのタイプの睡眠薬あるいは睡眠導入薬を想定して考えていきます。
何時までに与薬するのかを考えるのにまず考慮しなければならないのは、睡眠薬の「もち越し効果」です。これは、前の晩に服薬した睡眠薬の効果が翌日の起床後も続くことを指しています。目覚めがすっきりせず、頭痛、頭重感がある、眠気が残る感じ、だるい、脱力感がある、ふらつき、眩暈、呂律がまわらないなどが起こります。活動性が低下しますし、注意力、集中力の低下も起こりますから、ボーっとしている感じになります。
薬物は体内に取り込まれると、主に肝臓で代謝され腎臓から尿中へ排泄されます。排泄の速度は、ある時点から血漿における濃度が半分になる時間で示されます。これが、(生物学的)半減期です。
超短時間型の半減期が2~4時間、短時間型が6~10時間なので、この半減期を目安に与薬時間を考えることも可能でしょう。
もち越し効果のみでなく、健忘の問題もありますので、数時間で起きなければならないような時に睡眠薬を使うのは問題でしょう。
多くの病院では、不眠者の起床時間を午前6~8時頃までと考えて、一般的に午前2時頃までをめどに睡眠薬を予約しているのではないでしょうか。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011年