追加睡眠薬
2012年03月12日 09:10
【Q】
追加睡眠薬を渡す、渡さないで患者さんともめることがあります。患者さんが希望すれば、また夜ならばいつでも与薬してもよいのでしょうか。
【A】
次々と追加のベンゾジアゼピン系の睡眠薬を与薬すると、量の増えた分だけ副作用も出やすくなりますから、安易な追加与薬は問題です。特に問題となる副作用は、逆説反応でしょう。本来、情動に抑制的にはたらくはずの薬剤が、逆に興奮や焦燥感を強めるためにこう呼ばれます。薬剤による脱抑制が起きていると考えられます。不機嫌、攻撃性が強くなる場合、多幸的でおしゃべりとなる場合など、薬剤酩酊様の状態を引き起こします。
睡眠薬を要求してもめること自体、すでに患者さんに軽い脱抑制が起きているとも考えられます。その場合、健忘も起きていて、翌朝、中途覚醒時の睡眠薬要求についても覚えていないこともあります。攻撃的となる場合、他の患者さんと、あるいは看護スタッフのトラブルも起きがちです。夜間の問題行動が、睡眠薬の与薬後であれば、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の副作用としての逆説反応ではないかどうか疑ってみる必要があります。
脱抑制気味な場合で、追加薬を与薬せざるを得ない時には、ベンゾジアゼピン系の薬剤ではなく、不穏時、あるいは不眠時頓用として指示のある抗精神病薬などを使うことを考えたほうがよいと思います。ベンゾジアゼピン系の薬剤の精神依存、身体依存も問題となることがあります。安易に追加の睡眠薬を与薬するのは好ましいことではありません。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011年