生活支援サービスの購入とは?~(1)契約はどこまで考えられているの?
介護等の生活のための支援サービスを、代金を支払って購入するという消費の形に転換して10年以上の歳月が流れました。この間、消費財としたことで様々な事柄に変化が生まれています。今週は、そうした意識の変化がもたらす側面を考えてみたいと思います。
(1)契約はどこまで考えられているの?
障害や疾病を負いながらも長生きする人が増えたのは1950年代に入ってからで、大戦以前は40歳台でした。わずか60年ほどの間に30年も寿命を伸ばしたのですから、制度設計が難しいのもうなずけます。寿命を伸ばした要因としては、生活環境と栄養の改善、そして医療の発達がありますが、医療と対比して捉えてみると、生活支援のための介護等のサービスを購入することの意味合いの捉え方も変わってきます。
医療は、それが専門職として成り立って以来、常にお金を出して購入するものでした。時に政策として貧者に給付されたことはありますが、購入するものだとの意識は古くから一般化していました。それは寿命が生産年齢と一致し、回復後は原状復帰して借財の返済等が可能だったからです。
しかしわが国では、契約に基づいて消費財を購入するといった習慣や意識が少なく、医療においてはほとんど意識されてきませんでした。近年、医事訴訟等が頻発に起こるようになって初めて、わが国でも医療契約の考え方が根付き始めています。
生活支援の介護サービスにおいては、その発生が弱者対策であったことから、消費という意識もまだ必ずしも明確に意識はされていません。しかし介護保険制度が始まってこの10年でこの意識にも変化が見られるようになり、それと共に契約の考え方も急速に広まりつつあります。入所系施設では、社会福祉協議会が示したモデル契約書を利用することが多いのですが、そのとき提供されるサービス内容について、相互に明確に理解ができているのか、まずはその辺りの整理が必要と思われる事例も散見されます。