利用者の家を訪問したらひどい部屋で……
【Q】
利用者の自宅を訪問したところ、足の踏み場もないほどの散らかりようでした。そのうえ奇妙な臭いもします。いったいどうしたらよいでしょう?
【A】
初めて訪問した利用者の自宅が不潔で乱雑だと、逃げ出したい気分になることはあると思います。あらかじめ部屋のひどさが予測できるのなら、汚れてもよい服装で行くとか、靴下を1枚分余分に持参して重ねて履くなどの自衛策をとることができます。しかし、事前の情報がまったくない場面では、どうしようもありません。ふだんから、仕事用の服は、見た目がきちんとしていながらも、動きやすく、クリーニングしやすいものを選んでおくことが大切です。
あとは覚悟を決めて利用者の話を伺うだけです。そんな援助者の態度を、利用者はどのように見ているでしょうか? 自分の城である部屋に快く来てくれる援助者を嫌悪する利用者は、あまりいないのではないでしょうか。汚くても、くさくても、相手の存在をあるがままに受け入れ、その部屋に座ることができた援助者は、その段階で、まずは利用者を受容できたと思ってもよいと思います。
部屋の乱雑さは、利用者の心身機能の低下や現状の問題を表している面もあります。また、その部屋の様子から利用者の日常生活や対人関係を推測することができますし、利用者のこれまでの生活歴や趣味や好みや生活信条まで表していることもあります。そして、今後の利用者支援に向けて多くの情報を得ることができるのも家庭訪問の長所です。
利用者の暮らし方やその部屋は、援助者自身の価値観や倫理観と違っていることも多いと思います。そのようなとき、援助者だけでなく世間一般の価値観や倫理観と、利用者のそれらが違っていたとしても、まずは善し悪しの判断をしない非審判的態度が援助者には求められます。今後の対応は、訪問時のアセスメントをふまえ、訪問後に考えればよいのです。
汚い部屋であってもよく観察して、利用者の生活全体をあるがままに受け入れる努力をしていきましょう。
出典:神山裕美・木戸宣子『対人援助・生活相談サポートブック』中央法規出版、2008年