脱・多薬に向けて
【Q】
薬を多く服用している利用者は、副作用などが心配でなりません。一介護職として何ができるのでしょうか。
【A】
施設現場では、「利用者が暴れて、歩き回って大変だから、薬でどうにかしたい」という切実な事情があることでしょう。目の前で暴力をふるう高齢者を見たら、何とかしたいと思うのは当然です。しかし、薬に対して過度の期待を寄せると、問題が先送りにされて複雑になるだけです。
薬は諸刃の剣です。適応を考え適正に使用することで、薬の効果が最大に発揮されます。安易に薬を飲ませる介護ではいけません。薬物が適正に使われ、高齢者のADLやQOLが改善されればよいですが、処方調査をみても、果たしてこれだけの薬が本当に必要なのかどうかは疑問です。
薬が多い利用者に対して、薬効から予想される副作用を観察することが、副作用を最小限にするのに役立ちます。向精神薬が投与されていれば「ふらつきはないかどうか」、利尿薬が投与されていれば「脱水はないかどうか」などです。
観察のポイントで一番重要なのは全身状態です。普段どおり元気があるか、食欲はあるかなど、実にありきたりのことですが、一番重要な情報でもあります。誤嚥性肺炎も、元気がないことから診断されることが多いのです。日頃と比べて元気がないときは、薬の副作用も考える必要があります。元気がないことから薬の副作用を疑えば、内服している薬を調べ、作用機序や薬物の相互作用を調べることができます。
薬は化学物質であり、化学物質にはエビデンスが必要です。最近は情報が発達し、インターネットを利用して薬の副作用を知ることもできます。厚生労働省のホームページなどで、薬に関する新たな情報を確認しておくことをおすすめします。
出典:介護専門職の総合情報誌『おはよう21』2008年3月号、中央法規出版