薬に頼らない身体づくり
【Q】
高齢者が多くの薬を服用することの弊害はわかりますが、薬に頼らないためにはどうすればよいのでしょうか。
【A】
“健康な死”とは、健康と死という相反する二つの言葉が並び、薬物療法を適切にするには重要な概念です。
多剤になる理由の一つには、病気をとにかく“やっつけよう”とする考え方があります。死は医療の敗北であるという見方です。これはある一面では正しいですが、高齢者医療・介護では必ずしも正しくありません。健康な死という概念も必要です。
『元来、生と死は不分離であり、死があるからこそ生をより良く生きられ、より良く生きることで健康な死に至る。今をより良く生きることの積み重ねで、健康な死に至る。』
日常のQOLを低下させたり、大切な希望を奪うような薬物療法は、健康な死を奪うのではないでしょうか。薬は化学物質です。効果と副作用を理屈で考えて使用すべきです。適切な範囲での使用が必要です。残念ながら、何に対しても効く“万能薬”や“不老不死の薬”はありません。
ですから、回復を基盤とし、究極的には「健康な死」にいたる援助ならびに日頃の生き方を考えなければなりません。多剤が問題であるといっても、それ以外の方法をいくつか打ち出さなければなりません。薬以外にQOLをあげるものとしては、リハビリテーションがあります。力をつけるイメージで誤解されやすいのですが、どちらかといえば基本動作の維持獲得です。特に「パワーリハビリテーション」とは、“Produce Outcome to Worth-while for Elder Reactivation”の略です。普段使っていない筋肉を活性化する、バランス能力を高める、全身持久力をあげることを目的とした運動です。薬の適応と限界を考え、薬以外の方法もケアの中に入れていきましょう。
出典:介護専門職の総合情報誌『おはよう21』2008年3月号、中央法規出版