高齢者への薬物使用時の原則
2012年02月24日 09:10
【Q】
高齢者に薬を服用する際に注意すべきことはありますか?
【A】
医療の原則の一つに、“Do no harm(ドゥ・ノー・ハーム=害を与えない)”があります。医療行為は、それだけをとれば傷害に値するような行為です。それが許されるのは、患者や利用者を良くしてあげたいという気持ちが根底にあるからです。
ですから“Do no harm”の大原則を忘れてはいけません。薬物は生体に作用し、何らかの害を及ぼす危険性があります。効果と副作用を常に考えて処方しなければいけないのです。萎縮はいけませんが、安易な薬物の処方はもっといけません。
“Do no harm”の大原則から高齢者の薬物療法を考えるとき、回復(リカバリー)という概念が役に立ちます。高齢者の身体的な問題は、治癒という概念ではなく、回復という概念が大切です。「回復」の概念とは、疾患を治すという治癒を意味するのではなく、たとえ病気による制限があっても、満足かつ希望をもって何かに貢献できる生活をおくることです。
回復で一番大切な要素は希望です。希望のある過ごし方が大切で、薬物療法も希望を奪うような、鎮静を目的とした処方は問題であるといえます。特に向精神薬は回復を遅らせるものです。
出典:介護専門職の総合情報誌『おはよう21』2008年3月号、中央法規出版