高齢者の服用する薬
2012年02月21日 09:10
【Q】
施設に入居する高齢者は、一般的にどのような薬を多く服用しているのでしょうか。
【A】
一部の施設では、夜間は一律に寝てもらおうと、安易に向精神薬が処方されている実態があるのかもしれません。精神科の外来にも特養利用者が受診されますが、昼夜逆転による夜間の不穏への対応や、せん妄の薬物療法のためといった受診が多いです。このとき、施設での管理を容易にするために向精神薬を使用すると、転倒による骨折の危険性が増加したり、肺炎などの呼吸器疾患への罹患の頻度が増す危険性が増えます。
「眠らないから」「排便、排尿を促すため」「暴れるから」など、利用者の状態への対症療法的な薬の増加は、別の新たなリスクを生じることを十分認識した上でなければ、事故が起こるだけです。
たとえば抗パーキンソン病薬は高齢者に多く使用されていますが、この薬は副交感神経系を遮断することにより、便秘やイレウス、尿閉、口渇などの副作用が起こります。さらに、中枢性副作用として認知機能の低下、精神症状の悪化がみられます。特に高齢者ではその危険性が高いです。
便が出なくなると、今度は緩下剤を大量に投与します。緩下剤の慢性的な長期大量投与は、電解質異常や腸管神経の変性を起こす危険性があり、新たな合併症を起こすことになるのです。高齢者の場合、生理的に薬物動態が低下しているところに、さらに複数の薬を使用すると、予想できない副作用が起こることもあります。
出典:介護専門職の総合情報誌『おはよう21』2008年3月号、中央法規出版