向精神薬と認知機能障害
2012年02月08日 09:10
【Q】
向精神薬の副作用として認知機能障害が取り上げられることがありますが、何が問題となっているのでしょうか?
【A】
統合失調症の患者さんの多くは、集中力や注意力の低下といった認知に関する問題を抱えています。これまで統合失調症の患者さんに対しては、幻覚、妄想等の陽性症状の改善を中心とした治療が行われてきました。現在では、患者さんの社会復帰を目標に、社会適応能力の向上、就業能力の維持と改善が重要となり、これらを実現可能とするために、認知機能を改善させることが重要となっています。
認知機能の障害は、薬剤の副作用による場合と、統合失調症の症状の場合とがあり、これらの区別は難しいようです。定型抗精神病薬は陽性症状を顕著に改善するために、陰性症状や認知機能障害が前面に出てきたり、それ自体が認知機能を低下させたりすることがあるともいわれています。また、副作用対策のため使用される抗パーキンソン薬、睡眠薬、抗不安薬でも、認知機能が低下することがあります。非定型抗精神病薬は副作用が少ないので、抗パーキンソン薬の使用が減るだけでなく、それ自体が認知機能を改善する効果があります。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011年