自分の知らない制度について尋ねられ、うまく答えられませんでした……
【Q】
ある利用者から「自立支援医療」のことについて教えてほしいと言われましたが、日頃自分がかかわっている制度ではなかったので、うまく答えられませんでした。このようなときはどのようにすればよいのでしょう?
【A】
専門職として仕事をするうえでは、社会保障制度や関連する法制度、保健・医療・福祉サービスの最新の情報が必要で、日頃からいろいろとその収集や更新のために準備をされていることでしょう。しかし、日常的にかかわる制度やサービスはよく知っていても、あまりなじみがない分野についてはうろ覚えだったり、知らなかったりすることもありがちです。
そんなときは、体裁を繕い、不正確な情報を伝えるよりも、自分がわからない事実を受けとめて素直に謝り、調べて後で伝える約束をするほうが、利用者にはるかに誠実な印象をもってもらえるのではないでしょうか。経験の浅い援助者は、知識や経験ではベテランにはかないませんが、謙虚さや素直さでそれを補うことはできます。
また、制度は頻繁に変わるので、わからないことを調べることで新しい知識が増えますし、先輩たちがどのような情報源で必要な情報をチェックしているのか、仕事に必要な社会保障制度や社会資源情報は何なのか、改めて見直すきっかけになるかもしれません。
一方で、その利用者が日頃自分がかかわらない制度になぜ関心をもっているのかを知ることは、利用者理解を深めるチャンスになる可能性があります。制度や法律の情報は重要ですが、あくまでも利用者を支援する道具であり、素材でしかありません。豊富な専門的知識は、利用者ニーズを把握し、利用者のメリットになってこそ役立つものです。正確な情報を得るだけならば、精度のよい情報検索システムがあればよいのです。援助者は、目の前の人が何を望んでいるのかを理解することがもっとも大切です。
出典:神山裕美・木戸宣子『対人援助・生活相談サポートブック』中央法規出版、2008年