特養の利用料徴収を巡って~3.成年後見制度の利用は?
ある特養で利用料の支払いが滞るようになった利用者がいました。その方は認知症もあって国民年金の受取りも含め、資産の管理は長男夫婦に任せていたのですが、近年の不況の煽りで長男は職を失い、親の年金等の資産に手をつけるようになっていたのでした。
さて、特養の対応としては、どうあったらよいのでしょうか。
【Q】
成年後見制度の利用は?
【A】
成年後見制度の創設から10年の時間が経過しました。後見制度の利用はまだまだ多くありません。施設入所者の場合は、入所してから後見人等が立つことは、家族の同意を得ることも困難なため、あまり行われてはいないようです。入所に至る段階で、後見人がついている場合は、そのまま延長されているようですが、その場合には、後見人等が通帳の出納を確認しているので、管理の安全性が確実になります。
ただし、後見人、保佐人、補助人にどのような人がなっているかを調査した報告書では、家族・親族がもっとも多く、次いで弁護士、社会福祉士・司法書士の順で、その他に社会福祉協議会、施設関係者となっていました。社会福祉協議会をあてているのは、地域福祉権利擁護事業によるもので、グループホームの利用者に比較的みられるものです。
施設で通帳等を管理するようになったのは、一つには親族による利用者の財産侵害が多く見られることからです。今回の事例もその一つなのですが、こうした状況に心を傷めた施設の生活相談員が、成年後見の制度を利用して後見人になろうとすることもあるようです。しかし、同じ施設の利用者に対しては、利害の当事者の一方に当たることから、その方の後見人になることはできません。
施設の今後を考えると、金銭管理については第三者による一定の監査人を立てるなど、透明性の確保を目指すことが求められるのではないでしょうか。
【参考文献】
社団法人日本社会福祉士会編集『改訂 成年後見実務マニュアル-基礎からわかるQ&A』中央法規出版 2011.06刊
国民生活センター『入所施設とグループホームで暮らす痴呆性高齢者・知的障害者の金銭管理と権利擁護に関する調査研究』2004.04