特養の利用料徴収を巡って~1.利用料支払いができない以上、退去していただくのか?
ある特養で利用料の支払いが滞るようになった利用者がいました。その方は認知症もあって国民年金の受取りも含め、資産の管理は長男夫婦に任せていたのですが、近年の不況の煽りで長男は職を失い、親の年金等の資産に手をつけるようになっていたのでした。
さて、特養の対応としては、どうあったらよいのでしょうか。
【Q】
利用料支払いができない以上、退去していただくのか?
【A】
介護保険法においては、介護サービスの利用は、サービス事業者とサービス利用者との契約によるものとなりました。では、契約による入所(入居)である以上、特別養護老人ホームであっても、契約不履行ならば退所を求めることができるのでしょうか?
誰もがすぐ思いつくのは、特別養護老人ホームは社会福祉法人が運営しているということです。特養は介護保険制度上の施設ではありますが、それ以前に老人福祉法にて規定され社会福祉法においては第一種の社会事業と位置づけられています。となると、社会福祉法人による運営である以上、わけあって困窮する利用者を、契約不履行だからと追い出すことはできないと思い致すことでしょう。
では、この方に引き続き入所継続してもらうとして、今日の特養にあっては運営を考えないわけにはいきません。この方は年金等の収入がそれなりにあり、生活保護の申請はできませんし、収入がある以上、措置による減免の対象ともなりえません。まずは長男夫婦と協議を行い、利用者の財産を守ることを明確にすることから始めないとなりません。
利用者家族との協議は力のいるところですが、家族によっては施設職員の対応ではうまくいかないことも出てきます。ときには、行政と相談して措置入所といった形をとるといったこともあります。
【参考文献】
社団法人日本社会福祉士会編集『改訂 成年後見実務マニュアル-基礎からわかるQ&A』中央法規出版 2011.06刊
国民生活センター『入所施設とグループホームで暮らす痴呆性高齢者・知的障害者の金銭管理と権利擁護に関する調査研究』2004.04