医行為でない行為のポイント(2) 爪切り
【Q】
介護職が高齢者の爪切りを行う際のポイントを教えてください。
【A】
爪は指先を保護し、支える役割をもちます。爪に縦溝が目立つようになるのは、加齢による変化とされています。また、長年窮屈な靴を履き続けると巻き爪になりやすく、深爪をすることによって爪の先が皮膚に食い込む「陥入爪」がみられるようになります。爪切りを行う場合は、これらのことをよく確認しておきましょう。陥入爪や巻き爪は専門家の指示を受けましょう。
それでは、糖尿病のある利用者の爪切りは、なぜいけないのでしょうか。糖尿病のある利用者は感染に弱く、爪切りで皮膚を傷つけたりすると、感染症を起こしやすい状態となります。また、糖尿病のある利用者は皮膚感覚に障害をもつ場合も多くあります。痛みを感じない利用者では、少しの傷には気がつかない場合も多くなります。「ふとみたら、炎症を起こしていた」ということがあるのです。爪は皮膚の一部ですから、その専門は皮膚科医師となりますが、糖尿病のある利用者の場合等は主治医との連絡も重要になります。
ほかの物品でも同様ですが、爪切りに関して、使用前後の清潔には十分注意しましょう。
<手順とポイント>
・利用者に爪切りややすりがけすることを説明します
・利用者に合った用具であるか確認します
・入浴後や手浴・足浴後に行います
→爪を軟らかくしておくことで、切りやすくなります。
・利用者の手や足は固定できるよう介助します
→利用者の手や足が固定されていないと、思わぬ事故につながります。利用者ごとに爪の状態は異なります。皮膚を傷つけないようによく見て確認してから行いましょう。
・爪の切り方の基本は、深爪にしない、角は斜めに切らないことを確認します
→深爪は皮膚を傷つけることにもなります。角を斜めに切ると巻き爪になったりします。1回に広い範囲を切ろうと思わずに、少しずつ切りましょう。
・爪切りの後は必ずヤスリをかけて、角がないことを確認します
→ひっかき傷をつくったり、衣服に爪をひっかけたりなどの思わぬ事故を防ぎます。
・終了したことを利用者に伝えます
・終了後、必要な記録を残します
出典:白井孝子『改訂 介護に使えるワンポイント医学知識』中央法規出版、2011年