同調とは?
【Q】
高齢者と話をする際、同調することによる効果はどのようなものでしょうか。
【A】
同調とは相手に調子を合わせることです。正確には、同期化(シンクロナイズ)といったほうがいいかもしれません。
老人ホームなどを訪問すると、何人かの女性利用者がテーブルで和やかに話をしている場面に遭遇します。どんな話をしているのかと聞き耳を立てると、三者三様ばらばらな話をしていたりします。通常は対話といえませんが、外から見れば3人は仲良くおしゃべりをしているように見えるのです。
彼女たちは会話の内容そのものではなく、「おしゃべりをする」という雰囲気を楽しんでいると考えられます。自宅では口を開かない人が通所施設に行くと、会話にはならないのに、積極的に周囲の利用者とのおしゃべりに参加して、付き添いの家族が驚いたという例もあります。こんな時、本人が施設になじめるかどうか心配していた家族は、驚くだけではなく、とてもほっとするようです。
同調するとは、相手の様子を見て、その身体の動きや行動にテンポを合わせ、その場の雰囲気を共有することです。このような動作は、人間が生後すぐ母親などの養育者による声かけに反応して身体を動かすことから始まります。私たちは、生まれながらこのような能力を身につけているようです。
認知症の人も、相手が同調しようと試みれば、それを必ずキャッチしてくれます。認知症の人と同調するタイミングについては経験が要求されます。ベテランの施設職員は、「ちょっとした勘」「阿吽の呼吸」が大切と言います。初対面の場合、相手と同調するのは難しいものですが、一歩進んで試してみる勇気をもちましょう。
出典:NPO法人認知症フレンドシップクラブ『認知症の人のサポートブック』中央法規出版、2011年