行動観察とは?
【Q】
認知症の人の行動を観察・分析する際に役立つ「行動観察」について教えてください。
【A】
通常、認知症の人の行動はわかりにくいことが多いものです。行動・心理症状の1つである徘徊は、周囲の人が気をつけていないと、あっという間にどこかに行ってしまい、とんでもなく遠方で保護されたりすることがあります。
本人に尋ねると、「自宅に帰るつもりだった」と答えたりすることが多いのですが、実際には自宅はすでに取り壊されて存在していなかったりします。このような症状は「帰宅症候群」と呼ばれますが、本人にはちゃんとした理由がある場合が多いのです。
また、話をしているのに落ち着かなくてきょろきょろとあたりを見回していることもあります。どうしたのか聞いてみると、「巨大なネズミが何匹かすぐ近くにいる」と言います。その場にいる他の人には、そんなものは見ません。しかし本人にとって、ネズミのおかげで落ち着かない思いをしているのです。
いずれにしても、認知症の人の行動の特徴を分析し、本人の気持ちを推測することが必要です。たとえば徘徊をする人の場合、次のような分析を行います。
1)行動分析
Aさんは夕食時に、自分がいつも座っている席に誰か他の利用者が座っていたりすると、徘徊を始めやすい。
2)気持ちの推測
Aさんは自分の居場所がなくなってしまったため、自分の存在が否定されたような気持ちになり、自分の居場所である自宅に戻ろうとした。
3)本人への対応
夕食時、Aさんのお気に入りの席に他の人が座っていたら、別の席に誘導する。徘徊しそうになったら、同行して話を聞き、Aさんの不安が大きくならないようにする。
出典:NPO法人認知症フレンドシップクラブ『認知症の人のサポートブック』中央法規出版、2011年