苦手なタイプの利用者にどのように対応したらいいのか……
【Q】
今度お会いした利用者は、自分が苦手なタイプです。これからどのように対応していったらよいのか考えると落ち込みます。どうすればよいでしょうか?
【A】
相談援助職といえども一人の人間であり、人と人との関係には相性というものもありますので、どうしても苦手な相手というのは存在します。その場合、悪いのは自分でも相手でもなく、ただ単に「相性」だと考えたほうがよいでしょう。
重要なのは、苦手だと思わないようにするのではなく、苦手だということを自覚した上で、これからどうかかわるかです。では、これからどのように対応していけばよいのか考えてみましょう。
まず、「なぜその人が苦手なのだろう?」と分析的に考えてみましょう。何か思い当たる節はないでしょうか。原因(らしきもの)が見つかったならば、その影響を最小限に抑える工夫をしてみましょう。
次に、苦手の原因が利用者自身にある場合を考えてみましょう。例えば、短気ですぐ怒鳴る人などです。利用者の人格や生きてきたプロセスを変えることは、基本的にはできません。それよりも、自分の受け取り方を変えるほうがずっと容易で合理的だといえます。例えば、相手が威圧的ですぐに怒鳴るような場合に、「怒鳴られてしまうと、私もビックリしてしまって力になりたくてもなれなくなってしまいます」など、あなたの気持ちを素直に言葉で返す対応などが考えられます。また、大声を出したり粗暴な振る舞いが見られる場合、疾患からくる症状の可能性もあります。態度の裏側にあるものに視点を向けることも大切です。
また、苦手の原因が自分自身にある場合もあります。自分の考え方の傾向や得手不得手、個性や持ち味といった自分自身のさまざまな側面を自己覚知できるよう、援助を実践する際の自分自身の「傾向と対策」を練っておくことが有効です。とはいえ、自分を客観視するということはなかなか困難ですので、先輩や上司、あるいは同僚から意見やアドバイスをもらったり、スーパービジョンを受けるのも非常に有効です。
いずれの場合でも、利用者を理解しようとすること、自分自身を理解しようとすることが出発点になると思います。
出典:神山裕美・木戸宣子『対人援助・生活相談サポートブック』中央法規出版、2008年