認知症や精神障害のある人たちへの対応は?
【Q】
対人援助の勉強はしてきましたが、いざ認知症や精神障害のある人たちに出会うと、どのように接してよいのかわかりません……。
【A】
病気や障害による症状があったり、判断力や理解力の障害があって話がうまくかみ合わないことがあると、利用者の言っていることをどのように受け取ってよいのかとまどってしまうことがあります。しかし、病気や障害がある当事者たちは、先入観や偏見などによって周囲の人たちに理解されないことが多く、援助者の「理解しよう」という姿勢が信頼関係につながっていくことも多いものです。そういった点では、認知症や精神症状にうまく対応することだけではなく、そういう状況に置かれている人々を理解しようとすること自体が重要な援助であるといえるでしょう。
援助者の基本的な姿勢としては、認知症や精神障害などの症状そのものだけにとらわれることなく、そのような病気や障害を抱えている人々の生活上の困難や課題に目を向け、利用者が病気や障害を抱えながら生活していけるよう、ほかの職種とともに支援していくという姿勢が必要だと思います。
支援の計画を立てる際には、利用者が生活できないことに対してサービスを提供するだけではなく、利用者の気持ちや思いを受けとめること、また、利用者の自尊心を高め、自信につなげていくことなどを考える必要があります。例えば、他者とのコミュニケーションの取り方や交通機関の使い方など、利用者が生活を維持していくために必要な技術を練習していくソーシャル・スキルズ・トレーニングを考えていくことも援助方法の一つでしょう。
さらに、認知症や精神障害のある人々は、ニーズを十分に表現できなかったり、適切なサービスにつながらないということもあります。援助者としては、表出されないニーズについても十分に把握することに努め、利用者に変わって主張していくアドボカシーの機能も求められます。
出典:神山裕美・木戸宣子『対人援助・生活相談サポートブック』中央法規出版、2008年