抗パーキンソン薬の使い分け
【Q】
抗パーキンソン薬にもいろいろありますが、どのように使い分けられているのでしょうか?
【A】
向精神薬を服用していると、15~60%ほどの頻度で錐体外路症状を発症するといわれています。副作用が出現した時の対応として、薬剤の変更、減量、中止が考えられますが、薬剤を変更した場合の効果の維持、減量、中止した場合の症状悪化が起こるリスクを考慮すると、これらの対応がとれない場合が多くあります。そこで、抗パーキンソン薬がパーキンソニズム、ジストニア、アカシジアの症状にも使われます。抗パーキンソン薬は、抗コリン薬、L-dopa含有製剤、ドパミン遊離促進薬、ドパミン受容体刺激薬、ノルエピネフリン前駆物質などに分類されます。向精神薬の薬剤性パーキソニズムでは、ドパミン遮断作用によりアセチルコリン系が優位になるため、抗コリン薬を使うのが一般的です。L-dopaでの反応性は乏しいといわれています。
抗コリン薬としてよく使われるのは、トリヘキシフェニジル塩酸塩とビペリデンです。この2剤は比較的よく似た薬剤で、錐体外路症状に対する第一選択薬です。違いは効果持続時間で、ビペリデンは半減期が長いため1日1回の投与も可能です。またビペリデンには注射剤があるため、急性ジストニアやアカシジアなど、迅速な対応が求められる場合に有効です。せん妄を起こす可能性のある高齢者や、便秘、口渇、尿閉、緑内障といった抗コリン薬自体の副作用が困る場合は、ドパミン遊離促進作用のあるアマンタジン塩酸塩(シンメトレル)が有効ですが、ドパミンを作動させるため、症状悪化の可能性を考慮する必要があります。アカシジアを伴う場合は、抗ヒスタミン作用も有するプロメタジン塩酸塩が使われます。また、高プロラクチン血症、乳汁分泌に対しては、ブロモクリプチンメシル酸塩が有効です。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011年