抗精神病薬の効き方
【Q】
抗精神病薬を使用すると、患者さんによっては完治しているように見える人も多いのですが、抗精神病薬の効き方をどう考えればよいのでしょうか?
【A】
抗精神病薬は、疾患の原因を除去するようにはたらいているわけではないので、薬を服用している間は症状が見られなくても、薬を飲まなくなると、多くの場合症状が再燃します。抗精神病薬の効果を評価するためには、薬物の有効血中濃度を測定したり、症状評価尺度を用いるなどの方法があります。
抗精神病薬は主に統合失調症の治療のために用いられますが、統合失調症の原因や病態生理は解明されているわけではありません。抗精神病薬は統合失調症の症状のなかでも、特に幻覚や妄想などの陽性症状に有効であり、陰性症状や認知機能障害に対する効果は、陽性症状へのそれと比べて十分ではありません。また精神科の臨床において、薬物療法は中心的役割を担う存在ではありますが、同時に精神療法や精神科リハビリテーションも、同様に重要です。抗精神病薬の効き方の判断は、慎重にされる必要があります。
「完治しているように見える」という主観的な評価ではなく、薬物療法の効果の判断には、より客観性のある症状評価が必要とされます。
統合失調症の症状評価に使用される尺度は多数ありますが、なかでも、簡易精神症状評価尺度(BPRS)は、薬物治験を行うために多彩な症状を包括し、なおかつ薬物による症状の経時的な変化を簡便に把握する必要性から開発された尺度です。
また、薬の効果は投与量ではなく、血中濃度と相関するという考えが注目されているため、薬物の血中濃度を測定することも効果を知るための一つの方法です。抗精神病薬のなかでは、定型抗精神病薬のハロペリドールとブロムペリドールの血中濃度測定が保険診療で行われています。なお、近年の画像研究によって、必ずしも血中濃度と治療効果が相関しないということも指摘されているようです。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011年