抗うつ薬の効果
2011年11月29日 09:10
【Q】
抗うつ薬は効いてくるのに時間がかかると聞きますが、なぜでしょうか?
【A】
うつ病の原因はいまだ解明されていませんが、いくつかの仮説が提唱されています。いずれも、ストレス、遺伝的要因、神経症的人格特徴などが関与し、脳内の神経伝達物質、あるいは神経伝達減少の異常が起こると考えられています。喜怒哀楽の感情が起こった時、人の脳内ではノルアドレナリンやセロトニンといったモノアミン神経伝達物質が放出されますが、何らかの原因でこの減少が起きると、うつ病が発症すると考えられています。さらに、モノアミンの減少に伴い、神経細胞にあるシナプス後の受容体(モノアミンの受け皿)の感受性(数)が増加した状態になっている(少ない刺激で多く感じようとはたらいている)と考えられています。この状態では相対的にモノアミンが少ないため、神経伝達が正確に行われません。抗うつ薬は、神経伝達物質を増加させるため、受容体の感受性も正常な状態に近づくと考えられます。
抗うつ薬の効果発現には1~3週間かかりますが、神経の感受性が正常な状態に戻るまでの時間がこれに相当すると考えられます。また最近、神経細胞の新生を活性化する物質の存在が明らかになり、抗うつ薬がこれを促進させることがわかってきています。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011年