要介護高齢者のプライバシーの口外
【Q】
訪問介護では、利用者のプライバシーを知ってしまうことも少なくありません。もしこれらのことを口外すれば、何か罪に問われるのでしょうか。
【A】
介護の内容を介護保険法から拾ってみると、要介護者等に対する入浴、排泄、食事、療養上の世話、診療の補助、リハビリテーション、療養上の管理および指導等があげられています。これらはどれをとっても、利用者である要介護者等の私生活に踏み込んで行う必要のあるものばかりです。
介護従事者は、常に利用者のプライバシーにふれているといっても過言ではありません。利用者のプライバシーには、身体状況や病歴など医療・介護に関する情報のみならず、家族関係や職業、経歴なども含まれます。訪問介護の場合は、利用者の自宅に訪問して介護をするために、利用者や家族の詳細な私生活を垣間見ることになります。たとえば家族間の不和や、場合によっては破産の事実なども知ることができるのです。
これらのプライバシーにかかわる情報を第三者に話すなどして公表すると、プライバシーの侵害として民法の不法行為による損賠賠償を問われることになります※1。また、それが利用者や家族の名誉を侵害する場合は、刑法の名誉毀損罪に該当する場合もあります※2。介護従事者としては、これらのことを踏まえ、十分に注意して利用者のプライバシーにかかわる情報を取り扱う必要があります。
※1 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(民法第709条)
※2 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。(刑法第230条)
出典:吉岡讓治『職員と利用者を守る 介護現場の法律講座』中央法規出版、2010年