介護福祉士の秘密保持義務
【Q】
介護福祉士として仕事をする際、利用者をより深く知るために、生活歴などさまざまな情報を収集します。そうした情報を外部に洩らすと、何か罰せられるのでしょうか。
【A】
社会福祉士及び介護福祉士法46条は、「社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなった後においても、同様とする」と定めています。これを「秘密保持義務」といいます。これに違反して秘密を漏らしたときは、「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科されます(同50条)。
このように社会福祉士と介護福祉士(以下、介護福祉士等)に対して「秘密保持義務」を課したのは、介護福祉士等の業務がその性質上被介護者の私生活に深く入り込んでいかざるを得ないものであり、業務上当然に私生活上の情報を取得することになりますが、それが他人に漏らされると当該被介護者の私生活の平穏、社会的信用などが大きく傷つけられる可能性があるためです。
また介護福祉士等は、福祉、介護の専門職として国から資格を与えられています。したがって、国民の介護福祉士等に対する信頼を担保する必要もあります。このような理由から、前記のような「秘密保持義務」条項が定められているのです。
ところで、介護福祉士は名称独占といって専門的な知識、技能を一定期間養成施設等で習得するか、国家試験に合格して初めて「介護福祉士」を名乗ることができます。しかしこれは、名称独占であり業務独占ではないため、介護の仕事には「介護福祉士」ではない人たちも参加して仕事をしています。訪問介護員、介護支援専門員として仕事をしている看護師などさまざまです。そうすると、介護福祉士以外の人たちについては、秘密保持義務が課されていないために、仮に利用者の私的生活上の情報をほかに漏らしても秘密保持義務違反にならないというおかしなことになってしまいます(もちろん、プライバシーの権利の侵害になることは別です)。そこで法令等により、資格ではなく職種に対して「秘密保持義務」を規定しています。
出典:吉岡讓治『職員と利用者を守る 介護現場の法律講座』中央法規出版、2010年