利用者が援助を拒否しています。
【Q】
ある利用者は、「自分でやるから」「一人でできるから」と言って、私たちの援助を全然受け入れてくれません。とても一人でできるようには見えないのですが……。
【A】
一人でできるようには見えないのに、それをしようとしている利用者を見ているのは、援助者としてはとても心配ですよね。なぜ利用者は「自分でやる」「一人でできる」と言うのでしょうか? もしかすると、歳をとったり病気やケガによって、これまでできていたことができなくなってしまったことに対し悲嘆の気持ちを持っているのかもしれません。そのために、「できない」という現状を認めたくなくて、「できる」と言っていることもあるでしょう。そのような現実を否認している利用者に、「あなた一人ではできない」と説得しようとしても、かえって気持ちをかたくなにさせてしまうことでしょう。
そこで、利用者のストレングス(強み)に目を向けてはいかがでしょう。利用者が「自分でやる」「一人でできる」と言っているということは、「自分でやりたい」「一人でやりたい」と意欲の高さを示しているともとらえることができます。
このように、利用者の「自分でやる」「一人でできる」という気持ちを大事にし、現実の課題に取り組む意欲を認めることが大切です。利用者も自分で取り組む意欲を認められると、かたくなになっていた気持ちも溶けてくるでしょう。
そのうえで、一人でできるかどうかの試行やシミュレーションをしてみて、現実的な認識を高めていくという方法もあるでしょう。そのなかで、現実的にどこまで一人でやれるのか、どんな援助が必要なのかということが具体的になっていくことでしょう。
ただし、認知症などの病気の影響を受けていて、現実認識の力に障害があり、そのままでは危険性が及ぶ場合などは、援助者が利用者の現実認識能力を理解し、見守りの体制をつくっていくことが大切です。
出典:神山裕美・木戸宣子『対人援助・生活相談サポートブック』中央法規出版、2008年