福祉コミュニケーションの基本~1.ラポールを形成するとは?
福祉の支援は、個別支援であり、まずは対象者(クライアント)とのコミュニケーションから始まります。今日の福祉の理念は利用者主体とされていますが、対象者の想いを引き出し、理解してそれを尊重した支援となることが求められています。それはコミュニケーションを通じて見出されるものですが、一口にコミュニケーションと言ってもたんに意思疎通を図ること、あるいは情報伝達、情報交換ではなく、支援に必要な事項を引き出す、あるいは利用者の心理に働きかける等、様々な知識と技能を必要とします。
今週は、福祉コミュニケーションの基本を整理してみます。
【Q】
ラポールを形成するとは?
【A】
「ラポール」とは、信頼関係のことです。福祉支援者が対象者から情報を引き出そうとして様々な調査票をもって質問したとします。調査票の多くは「はい」「いいえ」を引き出す閉じられた質問形式になっていて、簡便に作業を進められるようにできていますが、一通りの答えが返ってきてはいても、それが対象者の本当の想い(主訴)を伝えていないことが往々にしてあります。
それは人の心理として当然のことで、それほどの付き合いのない者同士のコミュニケーションでは立場や地位などの要因が先だって成り立ちます。まして高齢者の場合には、福祉は施しといった意識が先行して、「お世話になってありがたい」との気持ちから、本心とは別の回答となる例が多く見られます。また、これまでの人生経験から、見知らぬ相手には自己防衛の意識が強く働き、なかなか本心を明かさない人もいます。
それだけに、不要な緊張を取り除き、安心をもたらす信頼関係を築くことは福祉のコミュニケーションの前提となるのです。それによって、ときには本人も意識していないような真のニーズを探ることにも結びつきます。
出典:都村尚子著『福祉コミュニケーション論-支援を必要な人が求めるもの、支援する人に必要なもの』中央法規出版