視覚障害のある人とのコミュニケーション
【Q】視覚障害のある高齢者とのコミュニケーションの工夫について教えてください。
【A】
加齢に伴う3つの視覚障害
高齢者の視覚に関する問題は3つあります。1つ目は視力です。年を重ねるにつれて視力は落ちます。特に近くの字や物が見えにくくなります。
2つ目は視野です。私たちは前を向いて、眼球を動かさず一定のところを見つめているとき、左右180度くらいまでの範囲であれば何となく認識することができます。これを最大視野角といいます。周囲の状況をきちんと把握できる範囲は約110度、集中して何かを見ることのできる範囲は約45度といわれています。高齢になると、この視野角が狭くなります。特にアルツハイマー型認知症の場合、視野が狭くなり、人や場所を認識することに困難が生じます。
3つ目は色の認識です。高齢になると、白内障という病気の履患率が高くなります。白内障になると、淡い色同士の組み合わせが区別できなくなります。
特徴を踏まえたコミュニケーションの工夫
視覚障害のある人とコミュニケーションをとるときは、その特徴を踏まえた工夫が必要です(図)。
まずは環境整備です。照明を適度な明るさにして、文字や顔の表情、身振りを見えやすくすることが大切です。明るすぎても暗すぎてもいけません。目安は、晴れた日に薄いレースのカーテン越しに窓から日差しが入る程度の明るさです。
次に、文字を示すときの注意点です。その人が楽に読むことのできる限界の文字の大きさを臨界読書文字といいます。文字は適切な大きさにしましょう。どのくらいの大きさであれば読めるのかを見極め、読める大きさの文字を示すことが必要です。
認知症の人は重度になっても平仮名が読める場合が多いため、大きな文字から小さな文字まで、仮名を順に読んでもらうことで、十分に読める文字の大きさを探ることができます。
高齢者だから、とにかく字を大きくすればよいだろうと思いがちです。私たちも最初の頃は、検査のときに、文字を拡大コピーして、いつも持ち歩いていました。しかし、臨界読書文字の検査をしてみると、小さな文字を読める人もいることがわかりました。一律に文字が大きければよいということではありません。その人にとって適切な文字の大きさを探すことが大切です。
≪図≫ 視覚障害のある人への対応
・照明は適度に明るく
―文字
―顔の表情
―ジェスチャー
・文字サイズを適切に
・コントラストをはっきりさせる
―淡い色・似た色・暗い色同士の組み合わせを避ける
出典:飯干紀代子『認知症の人とのコミュニケーション 感情と行動を理解するためのアプローチ』中央法規出版、2011年