利用者が出すお茶菓子や手土産をどう断れば……
【Q】
ある利用者は、自宅に訪問するたびにお茶やお菓子を出してくれたり、手土産をくれたりします。あるとき断ったら泣かれてしまいました。どう対応すればよいでしょう?
【A】
援助者は職務として利用者に接しているので、利用者からの謝礼品などを受け取る立場にないのは当然のことです。近年では、「サービス」や「契約」という意識が浸透し、利用者が保護や助けを受けるという弱い立場という意識も薄れてきつつありますが、利用者の気持ちからすれば、お茶やお菓子を出したり、手土産を渡すことによって、感謝している気持ちを表したいということもあるでしょう。
また、日本の文化として、来客をもてなすことや礼を尽くすことを大事にしている人であれば、援助者がお茶やお菓子、手土産などを受け取ってくれないということは、自分を受けとめてもらえていないのではないかという不安につながるかもしれません。また、援助してもらうばかりでなく、一人の社会人として認めてほしい、対等な立場として受け取ってほしいという気持ちがあるのかもしれません。
このように考えると、単に「職務上、受け取れない」「お断りします」というだけでは、援助関係を構築することは難しくなってしまうかもしれません。まずは、そのような利用者の「気持ち」を受けとめ、「理解しています」ということを表す必要があるでしょう。例えば、「お気遣いありがとうございます」「心配りが行き届いた方ですね」などと言うことによって、あなたの気持ちは受けとめていますよ、あなたが人に対して気遣いを持っている人であることをわかっていますよ、ということを表すことにもなるでしょう。
そのうえで、職務上、謝礼品などは受け取れないこと、謝礼に関係なくサービスや援助は提供されるということを説明する必要があります。
援助者としては、できれば援助開始の最初の段階から、職務で伺っているので、お茶やお菓子や手土産などは不要という姿勢を明確にしておくことが賢明です。
出典:神山裕美・木戸宣子『対人援助・生活相談サポートブック』中央法規出版、2008年