利用者から個人的な好意を寄せられてしまいました……
【Q】
ある利用者から熱烈なラブレターをもらい、自宅の電話番号を教えてほしいと言われたのですが、どう対応すればよいでしょう?
【A】
援助者としては職業上のかかわりと思っていても、利用者から個人的な好意を寄せられてしまうことがあります。特に生活範囲が狭められていたり、社会性が乏しい環境下におかれてきた利用者にとっては、身近に感じられる援助者の存在は大きいだけに、好意にも結びつきやすいのかもしれません。
援助者としては、利用者の立場や気持ちを理解することが重要です。利用者によっては、それまでの生育過程のなかで身内に向けてきた愛情や憎しみなどの感情を援助者に対して向けてしまうことがあります。これは「感情転移」といいます。このように援助関係とは、利用者の抱えている課題に取り組むための利用者と援助者との信頼関係であるとともに、利用者は援助者に対してさまざまな感情をもちやすい状況であるということを理解しておきましょう。
援助過程においては、利用者と援助者との関係性が重要視されますが、それはともに生活課題に取り組むための関係性であり、個人的な友好関係とは異なるものです。信頼関係の構築にあたっては、この点を援助者側が配慮しておく必要があります。
利用者からラブレターをもらったり、自宅の電話番号や携帯電話の番号などを聞かれたとき、担当者としては利用者の行為に応えることができなくても、利用者の存在を否定することにはならないような対応が必要です。援助やサービス提供は、援助者一人で抱えるものではなく、所属する組織の上司や同僚とともに担っていくものです。上司や同僚とも話し合い、担当者を複数にするなどチームとして対応する方法を考えていく必要があるでしょう。
出典:神山裕美・木戸宣子『対人援助・生活相談サポートブック』中央法規出版、2008年