BPSDの「暴言」に対するコミュニケーション
【Q】
暴言を吐く利用者とのコミュニケーションのポイントについて教えてください。
【A】
認知症の人による暴言の原因は3つ考えられます。1つ目は、本人がそのときの状況に対して「嫌だ、我慢ならない」など、何らかの不快な感情をもっていることです。2つ目は感情をコントロールする力(抑制力)が低下しているので何の躊躇もなく感情をストレートに出してしまうことです。3つ目は自分の周りの状況を把握する能力が落ちているため、例えば介護職員が限られた時間のなかで服を脱がせようとしていることを理解できないことです。
暴言には、その根底に本人の不快な感情があるので、まずは本人にとって不快な環境を探して、できるだけ避ける工夫をすることです。例えば、顔を拭くときに冷たいタオルは嫌がるなどです。
しかし、3回に1回は希望する温かさにできないのが現実です。そのようなとき、介護の仕方は2とおりに分かれます。1つ目は、相手が「やめろ」「バカ」「何をする」と暴言を吐こうが、嫌がって介護者の腕をつねろうが、強引に冷たいタオルを当てて「はい、おしまい」と拭き終えてしまう方法です。
2つ目は、「今日は雪が降ったから、雪で顔を拭くよ」と冗談のような本当のようなおどけた口調で話しかけ、相手を煙に巻き、笑わせながら顔を拭いてしまう方法です。ベテランの介護職員が2つ目の方法を巧妙に駆使する場面をよく見受けます。とびきりのユーモアがどこから沸いてくるのか不思議なほど、豊かで臨機応変な対応方法を身につけています。介護は人と人とのコミュニケーションのうえに成り立つもの。まずは言葉による状況説明、それもユーモアに満ちた一言を繰り出してみましょう。
出典:飯干紀代子『認知症の人とのコミュニケーション 感情と行動を理解するためのアプローチ』中央法規出版、2011年