利用者がなかなか心を開いてくれません……
【Q】
面接や訪問で何度も会っている利用者なのですが、なかなか話が深まらず、心を開いてくれません。こんな時はどうしたらよいのでしょう?
【A】
援助者としては、利用者と会うとすぐにでも実際の援助活動を開始したい衝動にかられてしまうかもしれません。しかし、利用者からしてみれば、相談はしてみたものの、目の前にいる援助者がどんな人なのか、何をどこまでしてくれる人なのかがわからなかったり、はたまた自分が何に困っているのかさえ漠然としていたりします。
こういった場合、援助を進めることよりも、「まずは相手のニーズは何か」「相手はあなたに何を望んでいるのか」を把握することが先決になります。相手の抱えている問題の中核をつかむことができれば、援助者は頭の中で援助目標を描き、どのようなかかわりをしていくかを描き、それを利用者に伝えることができます。そうなって初めて、利用者は援助者が信頼に値するかどうかを判断する材料を手にすることになり、援助を受けることによって自分にどんなメリットがあるのかをイメージしやすくなります。
まずは「あなたのことをよく知って、なんとかお役に立ちたいと思っています」「あなたのお話を聞いて、こういう点でお困りなのではないかと感じました」というメッセージを届けることが必要なのかもしれません。援助者がつかんだ問題の中核が正しければ、利用者の信頼を得るきっかけとなるでしょう。
利用者のニーズは必ずしも言葉で表現されているものと同じとは限らず、「一発正解」は困難な場合も少なくありません。だからこそ、真のニーズを探り、言語化して利用者に返しながらズレを少なくしていくことを繰り返さなければなりません。
出典:神山裕美・木戸宣子『対人援助・生活相談サポートブック』中央法規出版、2008年