「災害弱者への支援-社会福祉の立場から災害支援を考える」5
【Q】
災害発生時にはどういった支援が必要なのか?
【A】
このたびの大震災のテレビ報道では、車いすのお年寄りをサポートして高台に上ってくる一段の人々の映像が流されていました。すぐ背後に押し寄せる波に呑み込まれそうになりながらも間一髪で難を逃れた姿に、画面を見ている私たちも安堵したものでした。
しかし、津波による死者の多くが高齢者であったことから、災害時における救援体制のあり方を改めて考えさせられることとなりました。地方においては、多くの地域で高齢化が進んでいることもあり、虚弱高齢者や要介護高齢者、障害者の方を支援するのもまた高齢者であることも少なくありません。沿岸部では、震源からの距離が近ければ、津波が押し寄せるまでの時間は極めて限られます。誰が誰を支援するのか、支援する際に必要な体制、避難経路、救援までの所要時間、避難所までの所要時間、雨天を想定した体制等は、とてもその場で考えてできるものではありません。日頃、十分な情報収集と訓練を重ねていないと、短時間での対応は極めて困難です。
今回の震災で亡くなられたお年寄りの姿から、避難しようとして行動を起こしてはいても、所要時間が長かったことが想定されました。この地域では津波への避難体制はどこの地よりもできてはいたのですが、これまでの避難の実際から、避難所での寒さ対策が気になられたようで厚着をしていた方が多く、水を含んで体が重くなったことも死に結びついたようです。また、予めの想定経路を使って避難訓練をしたところ、車いすでは無理、意外に時間がかかる、避難経路に邪魔なものが多い、などの指摘がなされることも散見されます。支援者ともども被災してしまったでは支援の手も生きません。事前の啓発と調査、情報共有、周知の徹底など、しっかりと取り組んでおいてこそ、非常時に役立ちます。
小林雅彦著:「民生委員のための地域福祉活動実践ハンドブック」(中央法規出版)2011年8月刊