金銭のやりとり
【Q】
「お金を貸してくれ」という通所者への対応はどうすればよいでしょう?
【A】
実際に「お金を貸してほしい」と通所者からスタッフに話があったとき、あるいはデイケア内で他の通所者にお金の無心をしている通所者に対し、ルールに反するとして注意をすることも必要ですが、まずはその通所者と話をする機会をもち、なぜお金を借りなければならないのか、どうしてそのような状況になったのか、日頃のお金の使い方はどのようにしているのかなど、日常生活における金銭の自己管理の様子について明らかにしていく必要があります。そのなかからなにがその通所者の問題なのか、今回のことはあくまでも一時的なことなのか、あるいは地域で生活を営む上で金銭の自己管理に問題があると判断され、それに対してどのような援助が必要なのかを検討します。その結果、他者が介入しての金銭管理が必要と判断され、通所者もそれを希望された場合、以下のことに気をつけ実施をしていきます。
1.管理の方法や進め方についてはデイケア内で十分協議をし、決してスタッフが単独でかかわらない。
2.家族や関係者に協力を求め、状況に応じて実施主体になってもらう。
3.デイケアが主体となって実施する場合には、本人及び家族の同意に基づいた契約を交わすこと。
以上の3点は最低限すべきことだと思います。
精神障害者が地域のなかで自立した生活を営む上で金銭の自己管理ができるか、ということは大変重要な課題です。デイケアを利用することで適切な援助を受け、改善することができれば、地域のなかで安定した生活を続けていくことにつながると思います。一方で、注意を受け入れず、同様のトラブルを繰り返し、他の通所者に迷惑となるようなことが続く場合には、主治医と協議し、デイケア利用の適否について判断しなければならないこともあると思います。
出典:日本デイケア学会編『精神科デイケアQ&A』中央法規出版、2005.